【事例紹介】(株)IHI横浜事業所へのSynecoculture™導入支援
2025/02/18
◆概要
株式会社IHIの横浜事業所内の緑地の一部にSynecocultureを導入するにあたり、導入時の植生提案から導入後の管理のアドバイス、導入した結果等についての分析を1年間にわたって実施いたしました。
◆背景
横浜事業所内の工場跡地にある芝生緑地の一部に合計75 m2のSynecocultureを導入することで、Synecocultureを起点とした社員のウェルビーイングの向上やコミュニティ形成のきっかけ作りを目指しました。また、ネイチャーポジティブの一環として、芝生よりも生物多様性の高い場所を創出しました。活動を通じて沿岸の工場跡地といった環境でのSynecocultureの実施を検証することで、別拠点での展開やインフラ事業との接続の可能性を模索していただく一助といたしました。


圃場立ち上げ前の芝生緑地。工場跡地なため礫が多く、土も固い状態。
◆変化
2023年3月の圃場立ち上げ時には100種類ほどの有用植物を導入し、様々な作物の収穫をすることが出来ました。ハーブを収穫してハーブティーを作ったり、種苗の植え付けイベントや収穫イベントの開催等を通じて社内でコミュニティが形成されたりしつつあり、定期的な活動を導入支援後も実施しているとの報告をいただいております。また、当初礫が多くあまり肥沃ではなかった土壌環境下でSynecocultureを実施することで、土壌微生物の多様性および活性値※1が向上傾向にあることが観測されました(41 → 46)。植物種の多様性を増やすことで理論上相互作用のある関連生物の種数が当初の植生にくらべて約6倍になった※2という分析結果も得られました。


立ち上げから2か月後の様子(左)。夏前、様々な植物が旺盛に茂り混生密生を実現している様子(右)。
埋め立て地のため海風が強く、粘土質で礫も多い場所だったので、無施肥・無耕起・無農薬で植物がちゃんと育つか心配でしたが、杞憂でした。もちろん収穫量は多くありませんが、多様な植物や動物が環境に合う形でたくましく生きている様子が伺えます。圃場を日々観察していると、季節の移り変わりやちょっとした変化に気づくようになります。社員が周囲の変化に敏感になり、多様性の大切さや生態系を理解することは、仕事においてもポジティブな作用が働くのではないかと考えています。
SynecOのコンサルティングによりスムースに圃場を立ち上げることができました。生態系やSynecocultureに関する講義や実地でのアドバイスを通じて、参加メンバーのリテラシーを揃えることができたこともコミュニティ形成にとってよかったと思います。
株式会社IHI 技術開発本部 管理部長・佐藤彰洋(当時)
◆この事例に関連するサービス
【経済活動と自然資本の再生産の両立】 Synecoculture圃場導入コンサルティング
【生態系リテラシーの向上】 ワークショップ、座学・講演
※1: 株式会社DGCテクノロジーの提案する土壌微生物多様性・活性値という偏差値であらわされる指標を使用(https://dgc.co.jp/biodiversity/)
※2: 分析にはGloBIという相互作用の学術データベースを使用し、緑地で観測された植物種リストをベースに関連種数を算出(https://www.globalbioticinteractions.org/)
※掲載内容は取材当時のものです。